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第1回 国際ぬりえシンポジウム報告 2

シンポジウム2「ぬりえの科学」
次のセッションは、脳科学や精神医学の専門家、いわゆるお医者様によるぬりえが脳にもたらす効用についての講演でした。
ぬりえは脳を活性化させることが、古賀良彦先生をはじめとする専門家の方々の研究によって実証されました。

展示室には、脳の活性をコンピュータで画像化できる装置を持ち込み、一般の来場者にその場でぬりえをしていただき、脳がどのように活性化するのかをデモンストレーションいたしました。
その結果、ぬりえを始めてわずかな時間で脳のいろいろな部位が活性化するのを目の当たりにしました。これだけ脳のいろいろな部位が活性を帯びるのは、ぬりえをぬる行為に特徴的なことなのだそうです。同じ被験者に、ぬりえをぬっていただいたあと、ぬりえをぬるようにただ手を前後に動かすだけの運動をしていただいても、脳の活性は見られませんでした。
このことは、ぬりえをぬるという行為が、大変総合的な作業であることを示しているのだそうです。
1原画と下絵を見る→2原画の色や形を記憶する→3紙の感触や全体の構成を見たり、バランスをコントロールする→4どうぬるかプランニングする→5ぬる
実際ぬりえはこのようなプロセスを経てぬっており、この課程において脳の活動部位があちこちにあるため、結果として全体が活性化するのだそうです。

ぬりえは脳を活性化させることが、科学的に証明されたわけです。

鼎談「ぬりえと芸術」
一日目の最後のセッションは、大学で美術の教鞭をとっていらっしゃる先生方に、教育者の立場から、また、アーティストとしての視点から、ぬりえについてディスカッション形式で発表をされました。
その中で、日比野克彦先生は、アーティストの発想として、ぬりえは単なる「作業」に過ぎない行為だと、今まで思いこんでおられたそうです。しかし今回、コンテストの審査員を務められたりする中で、ぬりえには多分にクリエイティブな要素が含まれていることを実感されたそうです。
先生のお言葉を借りると、ぬりえには「ほどよい抽象性」があるのだそうです。これは、与えられた輪郭線という制約の中で、一般の人にも無理のない範囲でオリジナリティが発揮できるゆとりが残されているということを意味しているように思われます。そして、そのオリジナリティを発揮できるのは「色」です。
また、色は時間を飛び越えることができる、ということにも言及されておられました。無心に色を塗ることは、時間を忘れ、無我の境地に至ることができるということでしょうか。高齢者にぬりえが有用なのは、このことが作用しているのかもしれません。時間を忘れ、若かった青春の1ページに飛び込むことができる。色は、私たちにそのような機能をもたらしてくれるのです。

一日目のセッションは、ぬりえを文化、科学、芸術の側面から考察する大変充実した内容のものでした。ぬりえが持つ機能と背景、そして、ぬりえを文化に昇華させていくことの意義を、あらためて見出したセッションでした。

投稿者:Nurie |投稿日:07/07/24 (火)

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