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6月の美術館便り

3月~5月まで開催の企画「きせかえ展」が無事終了いたしました。大勢の方にご来館をいただきまして、大変ありがとうございました。昭和の10年代から40年代のまでの日本のきせかえと、海外のきせかえを展示させていただきました。
収集することによって、きせかえの歴史的なこともわかってきますので、これからも継続して、情報収集をして、また楽しい企画で皆様にごらんいただけるようにしていきたいと思います。

きせかえの思い出も、ぬりえと同じで10人10色です。
*展示のきせかえをみて、忘れいた思い出が蘇り、懐かしかったです。
自分で紙と色えんぴつを使って、衣装や家具を作り遊びました。それが嵩じてひな人形も全部紙で作り大満足でした。それをみて、当時は高価だったとおもいますが、両親がひな人形かざりを買ってくれたことを思い出しました。
*欲しい服のきせかえを作るときに、母がワンピーズの型紙を買っていたのをみてマネたりしていました。
*箱にしまって、いろいろきせかえをして遊んだことを思い出しました。

*自分でもマネをして作ったこともあります。どうして作ればいいかはすべてきせかえ人形を手本にして作って楽しみました。
*はっきりとは覚えていませんが、小さいころ着せかえなどで遊んだ記憶があります。
鮮やかな色彩に心がおどるような気持ちになります。
*海外にもきせかえってあるんだということも、初めて知りました。

ぬりえ、きせかえは日本だけのものとおもっている方が多いようですが、外国にもあります。内容はそれぞれの国によって、特徴があります。今、それらの特徴を調査をしているところですので、まとまりましたらまた本にして皆様に読んでいただきたいとおもっています。

さて最近は、大人のぬりえが人気になっていますが、授業にぬりえを取り入れている大学があります。先日訪問させていただきましたので、皆様にご報告をいたします。
その大学は、千葉県の天王台駅にあります川村学園女子大学で、人間文化部日本文化学科の倉澤教授のクラスでした。
西洋美術史が講義されている教室には入ると、教室は約150名の学生で一杯でした。大人気の講座なのです。若い女性の熱気に、圧倒されそうな程でした。
今回は14世紀の宗教画がテーマでした。
下準備ができると、その絵の解説をスクリーンに画像を映して講義がされました。今日の絵は、非常に細かく描いていることが特長だそうで、全体図、一部、またその中の部分を拡大して、いかに細かく描いているかを学生に画像をみせながら、講義をされました。
実物は肉眼では見えないそうですが、しかし見えないところにまで、描いていった絵が当時にはあったということを理解してほしいと講義を締めくくられました。

通常は講義がおわったらその絵を塗っていくだとおもいますが、私が訪問した日は、前の授業でだされた絵に、ぬりえをしていました。
15,6人ほどの学生の絵をざっと見せてもらましたが、大変丁寧で上手でした。いい加減には塗られていません。顔の色、髪の色は学生一人一人違っていて、元の絵は同じですが、色はそれぞれで個性があって、見飽きませんでした。

先生のお話を伺うと、なんと17年も前からぬりえを取り入れた授業を始められていたそうです。発端は、美術史をいかに学んでもらうか、学んでもらいたいために、考え出したアイデアがぬりえで、学ぶ手段であったのです。
絵の画像をみせながら講義して、講義した画家の絵を塗ってもらう。どこにその作家のポイントはあったのか、その点を理解することが、ぬりえをすることによってしやすくなり、そのポイントを意識しながらぬりえをすることで、手と頭が連動して理解しやすくなるというわけです。
「知る」一「分かる」一「行動する」一「考える」という流れをすることによって、分かったことを、塗るという行為で「行動」すなわち「体験」して、それにより具体的に考えることができるようになるのではないでしょうか。

先生は、色を「塗りこめ」と言っているそうですが、さっと一度位色を塗るだけでなく、もっともっと色を重ねて塗りこんでいくと、素晴らしい色になって、絵に深みや厚みがでてくるそうです。
1年間の授業を受けた作品を、学生たちはファイルにしているそうですが、そのファイルは1年間の自分の心の記録だとも言っているそうです。自分の感情がそのぬりえに表れているということを学生たちは知っているのです。ぬりえは嘘をつけないのです。
 
ぬりえ美術館は開館して、8月で5年になりますが、17年も前にぬりえを取り入れられた倉澤教授の授業に、ぬりえの奥深さ、魅力を再発見させていただいた授業参観でした。                           

投稿者:Nurie |投稿日:07/05/26 (土)

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