ぬりえのあれ、これ No.6
2022年は、ぬりえの出版物の中からぬりえに関する「あれ、これ」をご紹介いたします。
ぬりえで育った人
《色えんぴつの夢 竹宮恵子
駄菓子屋、という言い方は、今でも通用するのであろうか。・・・・
五円、十円と硬貨をにぎりしめて、私は友人の小さな店に走った。妹とともに”ぬりえ”を買うために。うす茶色の粗末なひと束の紙の中に、幾人かの少女達がほほえんでいた。
はっきりとは覚えていないが、それらが”きいち”のぬりえであった気がする。”お出かけ着”や”ゆかた姿”の彼女たちをいかに華麗に色どるか、妹と競争で配色に苦心したものである。
・・・・クレヨンで色をぬることを、私はいつのまにか卒業していた。限られた種類の色えんぴつで、紙の上の少女達に、変化にとんだドレスを着せねばならない。二つの色を重ねる、外側を濃く内側を薄くぼかして、立体感をつける、ほほの赤味のじょうずなぬり方等など、ちいさいな発見を重ねつつ、自慢の迷作を次々と完成させていった。
私は、次第に可愛らしくポーズをとる少女達に、あきたらなくなった。色をぬるだけでなく、ぬり絵そのものを、自分で描くことを覚えたのだ。私の少女達(あるいは少年達)は、
ひとつのポーズにとどまらず、歩き、泣き、笑い、さまざまなセリフまで、しゃべり始めた。平面空間を自在に動かす楽しみは、すでに漫画以外の、なにものでもなかった。
・・・・私と同世代の少女漫画家達の中には、ぬりえからスタートを切った者が多いのではないかと思う。私のもとへ、幼い読者からイラスト(!!)と称する可愛い少女の絵が、たくさん送られてくる。彼らが自分の絵を動かしてみたくなった時、新しい漫画家が誕生するであろう。
私がぬりえを卒業したのは小学校五年の頃と記憶している。(漫画家)》
(『きいちのぬりえ ー メリーちゃん花子さん』草思社)
~小学館スクウェア 「ぬりえ文化」より~
昭和の20~30年代、犬の名前に”ポチ”が多くつけられていたものです。
「花さかじいさん」にも、”裏の畑でポチが鳴く・・・”とあります。
ポチは明治時代の文明開花とともに付けられるようになったそうです。
「花さかじいさん」の歌によって、ポチが広まった、とも言われているそうですよ。
ぬりえマスコミ情報
★サンデー毎日創刊100周年5月8日・15日合併号に”「ぬりえ美術館」20周年の節目を経て今秋閉館へ”の記事が掲載されました。
展示室のご案内
★6月~7月は常設展示となりますが、絹本の絵は引き続きご覧になれます。
★館内のぬりえコーナーは、コロナ感染防止のためにしばらくお休みをしています。
ご了承のほどお願いいたします。