東京都荒川区町屋 土日曜のみ開館
開館時間:(3月~10月)12:00~18:00 (11月~2月)11:00~17:00

ぬりえ美術館

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美術館便り3月~5月合併号

令和4年春の企画展
「ありがとう きいち 春」~きいちの春は花のいろ~
蔦谷喜一が晩年に描いた童女画の絹本を展示いたします。

2022年3月5日(土)~5月29日(日)

ぬりえ美術館は、8月で開館20周年を迎えます。20周年をもって10月末に閉館いたします。

今年の春の企画展では、喜一の晩年の童女画を展示しています。童女画について、きいちは小学館発行の「わたしのきいち」の中で以下のように語っています。


<ずっと美人画をめざしてきたが、最近美人画は余技だとわかった。これからは童女の絵を中心に描いていこう、八十歳をすぎて、ようやくその覚悟ができました>


喜一がせっせと描き続けた童女百態シリーズの絵は個展などを通して多くの喜一ファンの手元へ渡っていった。その数は優に百枚はこえると思われるが、それでもまだまだえがきたりないと言う。
「童女のもつ愛らしさとかやさしさとか、また色彩という面ではかなり満足できるものにしあがっていると思うんです。しかし問題はデッサンです。どうしてもデッサンがうまくいかない。」
3頭身の童女の絵にも厳密なデッサンは必要なのだ。


あれほど美人画に憧れ、いつかは美人画だけを描く画家になりたいと思いを募らせてきた喜一だが、八十歳を過ぎて、童女画こそ自分の取り組むべきテーマであることに気付いたようだ。
 

「美人画は描いていて楽しいし、これからも続けていきたいと思いますが、でも、自分の生涯の仕事として全うするものじゃないと最近思うようになりました。それに、私が描かなくても、ほかにいくらでも描く人がいる。だから今後は美人画については余技でやっていこうと考えています」


まわりの評価はともかく、同じ表情の童女画を毎日毎日描き続けることからするなら、ひとつの作業を積み上げるという点で、アーティストより職人というほうが自分にふさわしいと思うこともある。


「父親の郷里に伝わる津軽塗りは、何度も何度も色を重ねていくことで、意外な風合いが出て、それはそれでとてもいいものです。でも、何回も色を重ねる作業といったら大変なもので、それを洒落でね、ばかにならなくちゃできないからと、“ばか塗り”なんて読んだりもするんですね。私の絵もこれに近いかなと思うことがあります。八十を過ぎても飽きもせず女の子の絵ばかり描いているなんて、変わり者で、ばかだと思われるかもしれない。でも、私自身が楽しく、喜んでくれる人がいるなら、ばかにだってなれる。やり続ける意味は十分にあると思うんです」


「今日あるのは、ぬりえのおかげなんですけどね、逆にぬりえに翻弄されて、一生分を遊んでしまったかなと思うことあるんですよ。もっと、その遊びがなかったら、ここまで童女の世界に固執できたか、そのへんはわかりませんけどね」


「昔から、悠久の雲に乗ってふわふわ飛んでいくみたいな、そんなことを想像するのがとても好きだった。だから、これから精いっぱい絵を描いて、最後は天使たちに迎えられて、ふわふわした雲に乗っていくようなのがいいと思っているんですよ。そう考えると死ぬことも、また楽しいという感じ。こんな最後が一番自分にふさわしいと思うんです」


昭和20~30年代のぬりえから、晩年は絹にぬりえのような女の子を描く童女画へと変化をとげた喜一。
ぬりえに翻弄された、という言葉もでてきましたが、美術館を訪れる来館者の言葉を聞いていると、あの時代にあのぬりえがあったから心が温かく、満たされた、ときいちに感謝し、満足されている方々はほとんどです。


あの当時、あの時代の過去のものとしてとらえるのでなく、自分の作品が当時の子ども達にどれほどの影響を与えていたかを考えてもらえば、翻弄されたとはかんがえる必要なないと思います。
ぬりえが流行していた時代の中で、きいちのぬりえだから、きいちだけしかできなかったぬりえのすばらしさをあると考えています。



ぬりえ美術館は今年20周年を迎えますが、20周年をもって閉館の予定でございます。10月までは、きいちのぬりえの魅力を精一杯ご紹介していきたいと思います。

引き続きご支援、ご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。(館)

Posted: Nurie : 22年03月05日 | 美術館だより

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