きいち千夜一夜 NO.14 きいち没後15年
「個人的には『ガリバー旅行記』が好きなんですよ。特に小人の国なんかいいなあ。自分がガリバーになった気分でね。いろいろ想像してみると楽しいじゃないですか。私は子供のころから、ミニチュアの家具のように、実生活の中にあるものをそのまま小さくしたようなおもちゃに興味があって、そういうものを眺めながら、仮に自分よりもずっと小さな人間がいて、そこで暮らす様子を観察できたら、どんなに楽しいだろうっていつも想像していたんです。きえかえを描き始めて、家具や電気製品やふとんまで、その中に組み入れようとしたのや、そうした下地があってのことかもしれません」
「きせかえ」というその名のとおり、喜一が始めるまで、きせかえの中心はあくまでも着物や洋服や装身具だった。それが一枚の紙で、タンスやテーブル、ソファまでが揃うとは、子供たちはおおいにおどろかされた。時にはアメリカのホームドラマでしか見られないような大型の冷蔵庫までもが飛びだしてくるのだ。
「椅子人るにしても、どうしたら立体的になるかを考えるのがまた面白いんです。人形は平面でできているから、まげてそこに座らせることは難しいけど、少なくとも人形たちの暮らす空間をつくることで、遊び方にも広がりが出たと思うんです。仕掛け絵本などがヒントになりましたね。」
今の彼の仕事場には、ボール紙でできた多くの人形や家具の型紙が残されている。ガリバー気分で描き、つくり続けたきせかえだから、それは彼の夢の断片でもある。
そして、このガリバー気分は、彼の描くぬりえの世界にも共通する部分があるようだ。実際には存在しない三頭身の女の子の世界にここまでこだわってきたのもそう考えると納得がいく。
参考図書 「わたしのきいち」小学館
「たけうま」
作者:きいち
年代:昭和20年代
昭和20~30年代でも女の子はあまり竹馬に乗ることはしませんでしたが、一度作ってもらって竹馬の練習をしたことがあります。垣根に寄りかかって、竹馬に乗ろうとしましたが、どうやっても乗れなくて、諦めた覚えがあります。たった一度の竹馬でした。
ぬりえ美術館メディア情報
○1月23日発売の女性セブンにぬりえ美術館が紹介されました。
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