今年は早くも梅雨に入りました。
雨になると外には遊びに行けないので、お人形と遊んだり、ぬりえをしたり、きせかえ遊びをしたり、室内でできる遊びをしていたものです。来館者さまの感想やアンケートからも、雨の日には
ぬりえをしていたという回答が多く寄せられていますが、皆さまはどのように過ごされていましたか。
毎月第三の木曜日に開催されている「大人のぬりえサロン」でされているデコぬりえ®が"きいちの生誕100年"のこの時期に、大胆に進化をしていると、"大人の3Dデコ塗り絵」"として東京新聞 3月26日(火)にご紹介されました。
2006年にぬりえが脳の活性化に役立つと言われて出版社がどっと"大人のぬりえ本"を出版して、「大人のぬりえブーム」が起こりました。さまざまな画家の絵がぬりえとなって本になり、本屋さんの店頭を賑わしました。
ぬりえ美術館では、その大人のぬりえブームが始まる2年まえの2004年から大人の人にこそぬりえをしていただきたいと考えて「大人のぬりえサロン」をスタートしていました。その後日本は高齢化率が世界ナンバーワンという高齢者の多い国になりましたので、認知症の高齢者をふやさないようにするために、脳の研究が活発になっていきました。脳の研究から、脳の活性化をするのにいつくもの方法がありますが、その中に「ぬりえ」が良いということが分かり、ぬりえブームが起こりました。
ブームでしたので、その人気はあっという間に静かになり、店頭からはぬりえ本が消えてしまいましたが、ぬりえが高齢者にとって良いということは、高齢者の施設などに伝わって、2006年以降もデイサービスなど高齢者の施設でぬりえが積極的に行われています。
ぬりえ美術館では、2004年から「大人のぬりえサロン」を開催していましたが、1回だけ参加の方が多く、継続してサロンでぬりえをするという方がすくないため、どうしたらいいかと考えていました。
ぬりえを好きな人は、どちらかというと絵が描けない人が多いので、そのため服や着物に自分で自由に柄を描いたり、背景を描いたりすることは難しく、描けない人が多いのです。自由に描ける人は、ぬりえはしないで自分で好きに絵を描いていけるのです。
またぬりえが上手みえるのは、色彩のセンスのよい人、絵が上手な人なのです。そのため、初心者の方は、サロンに参加しても絵が上手いという達成感が得られないため、1回限りの参加になりがちでした。
そんなとき、講師のyun先生が、「デコぬりえ®」を考案されました。柄を自分で描けなければ、柄になるもの、例えばバラの花やバラの形をしたビーズをつけたり、ドレスのレースを貼り付けたらいいのではないかと絵をデコレーションしていくことを考えだしました。
このデコぬりえ®をしてみると、初めて参加した人でも、上手に見えて、達成感を得ることができますので、心に充実感、満足感が広がり、次回も参加してみたいということに繋がっていきました。
2011年6月からこの「デコぬりえ®」という名称をつけて、毎月テクニックが進歩していきました。そしてこの東京新聞でタイトルに使用された「3Dデコ」という名称ですが、デコレーションだけでなくぬりえの少女が浮き上がって3Dのようにみえるところから、このような表現になりました。
yun先生が考案したり、又参加者の方がやってみたりして、いつもテクニックが進歩し、進化しているため、平たい紙の上のデコレーションだけにとどまらず、少女を紙から切り離して、裏に台紙をつけて、三次元にしているため、少女が前にせり出してきているのです。そのせり出した少女の上にさらにデコレーションパーツを貼り付けていきますので、更に更に三次元度が高まっていくことになります。
ぬりえは世界中にあり、日本でも明治の時代から塗られています。きいちのぬりえは、昭和の22年から誕生していますが、きいちが「フジヲ」と言って描いていた昭和の10年代にも盛んにぬりえがされていたわけです。単に塗るだけでなく、デコレーションをすることにより、より新しい、革新的なぬりえになり、21世紀に相応しい、これからも続いていく「きいちのぬりえ」になったのではないかと考えております。
日本の伝統である歌舞伎の世界でも、伝統を継続、継承していくだけなく、新しいものを取り入れ、その時代に相応しい歌舞伎となっていくので、長く人気ある歌舞伎として残り伝わっていくものと思います。
きいちのぬりえも同じように、新しいものを取り入れ、その時代にあったきいちのぬりえとして、これからもずっと生き残って、皆さまに可愛がられたいと願っております。きいちのぬりえは単なる古い、懐かしさだけのぬりえではなく、現代の人にも可愛らしさを認められたぬりえとして、行き続けたいと思っております。
きいちのぬりえは小学館から、17種類のぬりえ本が出版されています。その他昭和20~30年代に販売されていた袋入りの復刻版が7種類ございます。
どうぞ新鮮な目できいちのぬりえをご覧になってみてください。(館)