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6月の美術館便り

ぬりえ美術館のある荒川区町屋では、都電沿線の薔薇が5月の半ばから咲き誇り、
6月も引き続き楽しめそうです。そして荒川自然公園では、カブト虫やオオムラサキの蝶の観察ができる時期になりました。荒川自然公園内も緑が豊富ですので、一度足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。下車駅は、都電荒川線の「荒川二丁目」です。

■「ぬりえの不思議」発行 
株式会社ぎょうせいより、―「ぬりえの不思議」こころと体の発達に見るその力―が5月に発行されました。
幼児教育・美術教育、発達心理、脳科学分野の研究者の方に、私、ぬりえ文化研究家を加えた4名の執筆者が、それぞれの専門分野から「知られざるぬりえの世界」に迫るというぬりえの専門書でございます。
内容としては、
1.おもに1歳~6歳の乳幼児の発達段階に応じた絵柄の選び方、
ぬりえを応用した表現遊びのアイデア、
筆記具操作(手指の運動機能)の発達、遊戯療法、脳波測定など、
多彩な切り口で、ぬりえの魅力と効用、心身の発達との関係をわかりやすくご紹介してます。
2.ぬりえ美術館関連では、現在も人気の「きいちのぬりえ」をカラー口絵等で掲載するほか、今まで私が調査をしてきました海外の幼稚園・保育所におけるぬりえ活用事情などや、ぬりえにまつわる珍しい話題も書かせていただきました。
3.さらに今話題の"ぬりえと脳"の関係についても、脳の関連部位や効果などが
詳しく書かれています。

ぬりえ美術館では、今まで3冊のぬりえ関連の本を発行しております。そこに何度も書きましたが、ぬりえは誰にでも知られているものにもかかわらず、ぬりえの研究はなされてきませんでした。
「ぬりえの不思議」の序に、尾崎康子先生が、その経緯を書かれています。
「保育や教育の現場では、ぬりえは、画一的な作業であり、創造性を欠くものとして、長らく、保育や教育の中で正当な位置づけがなされてきませんでした。保育者や教育者は、ぬりえは子どもの手慰みであるという発想から抜け出ることができないままでいます。
・・・・想像性と創造力を育むために、子どもに真っ白なキャンバスを与えることをよしとしてきました。しかし、創造性は、子ども自らが無から作り上げるものでしょうか。子どもは、周りの人的物的環境から多くの影響を受けながら発達していく存在であり、人とのかかわりの中で様々な能力を習得していきます。
・・・白いキャンバスを前にイメージや描画技術を持たない幼児は、何をどのように描いたらよいか戸惑うことが見られます。そのような時には、ぬりえでイメージを与えてあげると、容易にイメージの世界を表現する体験ができます。
・・・・ぬりえは、創造性の枠を固定するのではなく、創造の世界への導入になると考えられます。」

「保育者や教育者が、ぬりえを評価していないのは仕方がないことかもしれません。なぜなら、これまでぬりえの研究が世の中に広まることがほとんどなかったからです。そこで我々は、本邦で初めてのぬりえの学際的な専門書を刊行しました。・・・・
本書を一読して、ぬりえの秘密と新たな世界を知って、教育や保育の活動の中に正当に位置づけてもらうことが、著者一同の、そして何よりもぬりえが大好きな子どもたちの願いです。」

従来まで、保育や美術教育の先生方から研究書、専門書が出されていませんでした。
ぬりえ美術館では、ぬりえの魅力、ぬりえの効果などを考えてみますと、「創造性のないもの」として否定されたままでいいとは思えませんでした。そこで海外での教育現場でぬりえがどのように認識されているのか、効果をどのように捉えているのかなど、調査をして、発表をしてきました。
そして、今年この「ぬりえの不思議」で専門者4名によるぬりえの専門書が誕生することとなりました。
海外では、積極的にぬりえを教育プログラムに採り入れている国があります。
今後日本でどのようにぬりえが捉えられ、考えられていくのか、ぬりえを考える一つの契機になってくれればと思います。
 
どうかこれを機会に、「ぬりえの不思議」をご一読していただければ幸いです。
尚、本は、ぬりえ美術館にも置いてございます。(館)

投稿者:Nurie |投稿日:10/06/06 (日)

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