« 2月の美術館ニュース | メイン | アイ・コミュニケーション/アイケア情報誌掲載のご案内 »

2月の美術館便り

今年も早2月となりました。一番寒い月ですから、インフルエンザや風邪に十分に気をつけて、お過ごしください。
1月に続き、今月もフィンランドのぬりえ状況をご報告いたします。

プレイパーク
フィンランドには、保育園に代わるような「プレイパーク」と呼ばれる、大事な施設があります。
訪問したプレイパークでは、昔は、塗り方についての注意点や指導等言っていたそうですが、現在はこのプレイパークでは何も指導はしないとのことでした。指導的な点があるとすれば、初めに「自由に、何色を使ってもいいとか、5色だけ使う」とか言うだけだそうです。
ぬりえの効用としては、下記の点を挙げていました。
●大きい子どもには、手のスキルを磨き、小さい部分も上手に塗れるようになる。
●気を静める。●セラピーになる。
●小さい子ども達には、ぬりえというより「色を使う」という世界の中で、5ヶ月の赤ちゃんを大きな紙の上に乗せて、色を使って遊ばせる等をしている。
色を遊びながら、色の楽しさ、運筆、落ち着きなどを体感させているようでした。

フィンランドの子どもの捉え方
プレイパークの先生が、子どもとは「未来の希望」、「未来そのもの」とおっしゃっていました。「子供が未来そのものである」という考え方は、先生個人の意見ではなく、多くのフィンランド人が考えていることではないかと短いヘルシンキの滞在の中で感じました。
レストランで食事をするとき、パリではいいレストランでは子どもを連れては入れない店が多いのですが、ヘルシンキでは、レストランは子連れOKです。どんなレストランにも子ども用の椅子が準備されています。例えば現代美術館のレストランでは、「天使の椅子」と呼ばれる羽のついた子ども用の椅子が準備されていました。
その他、駅、図書館、街中で見ていても、子どもは、自分だけの子供ではない、国の子どもであるという考えがフィンランドの人にはあるようなのです。人口が少ない国ですから、子どもが大事であるので、社会全体として育てようという意識を皆がもっているように感じました。フィンランドの成績優秀の秘訣として、1月には、「社会性を見につけることが第一義であり、自分で考えさせる」とお伝えしましたが、もう一つは、"子どもを社会が育てようとしていること"ではないかと思いました。

父親の存在
そして、子どもの教育について、取材やアンケートを従来の考えで母親対象に依頼をしたところ、フィンランドの方から「母親だけが保育者ではない、父親も対象である」という回答をいただきました。
子どもを育てるのは、母親だけではなく、父親の役目でもあるということが何も特別のことでなく、それが当たり前という考え方であるのです。お父さんが子どもに食事を与える姿をみていても、いかにも手馴れているので、普段からしていることだということを見ても分かりました。
 
フィンランドの教育の秘訣
何も教えてはいない。何も特別なことはしていない。自由表現をさせる。と先生方が言っていましたが、何も特別なことがないことがフィンランドの秘訣であり、教育の前に、まず人間形成、人格形成を重視しているということがフィンランドの教育成果を上げているのではないでしょうか。
教育の成果の効率を求めるのではなく、自分で考えることのできる人間を育てることに力をそそいでいる結果が教育レベルをあげているのではないでしょうか。この点が、
一番重要なポイントだと思いました。

フィンランドには、「大人のぬりえがあった」フィンランドで、「大人向けぬりえ」の本が大変人気になっていました。この「大人のぬりえ」本の作者は、09年の春には赤ちゃんが生まれるというアンヌ・ペルトラさんという30代の女性でした。彼女は、脳とぬりえの関係については、全然知らなかったそうです。
現在、既に2冊発売され、いずれも二刷りに入っているほどの人気で、購入者は30~40代と老人たちが中心だそうです。
フィンランドの教育レベルの高さと大人のぬりえの発生は、関係がないようでいて、どこかでつながっているのではないかと思います。画一的な教育でなく、自分で考えるように育てるフィンランドの教育から、大人のぬりえも生まれてきたのではないでしょうか。
私も、フィンランドの教育の秘密を探ろうと思って視察をしに行ったのですが、秘訣とかメソッドとか簡単に答えを求めてはいけないということを、ヘルシンキの街で学んだように思います。
秘訣とかメソッドの前に人間教育、人格教育を重視することが一番人間にとって大事であるという当たり前のことを、再認識したフィンランドでした。(館)

投稿者:Nurie |投稿日:09/02/01 (日)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
/249

コメント

コメントしてください



(アドレスは非公開です)


今後の投稿のためにアドレスなどを保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)