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2月の美術館ニュース

1年で最も寒い月、2月、如月(きさらぎ)。今年の寒さを節分の豆まきで鬼といっしょに吹き飛ばしましょう。寒いこの二月を上手に過ごすには、豆まきのように体を動かしたり、時にはぬりえをしてこころをリラックスさせたり、心身を柔軟にして乗り切りたいものです。

館内に入ってスグ目に留まるぬりえは、その時々の季節のものやテーマを儲けて月毎に展示しています。このコーナーでは、月替わりのエントランスのぬりえから1枚を選んでご紹介します。
今年のエントランスは昭和10年代のぬりえを展示しています。
2月のエントランスは、擬人化のぬりえの展示でございます。

タイトル:竹屋コーヒーパーラー
作  者:フジヲ
年  代:昭和10年代

「竹屋コーヒーパーラー」は、きいちの戦前のペンネームのフジヲ時代のぬりえです。
 昭和初期のぬりえには、擬人化のぬりえが沢山見られます。擬人化の手法は古くはギリシャにもみられるそうですが、日本にも「鳥獣人物戯画」のような擬人化の絵があります。「鳥獣人物戯画」は12世紀から13世紀(平安時代末期~鎌倉時代初期)に描かれたものですが、その「鳥獣人物戯画」には、本質だけでなく背景などが詳細に描かれていて、その点がアニメや漫画の原点とも称されています。日本文化に独特の描き方が絵巻物に見られるわけで、描き方、その背景にある考え方が、現代の漫画、アニメにまで続いているのです。
 そして、昭和初期のぬりえにも、擬人化のぬりえが描かれ、子どもたちに楽しさを与えていました。描かれていたものは、ウサギ、すずめ、象、ねずみ、犬、猫等々。収蔵品のなかでは、すずめを描いたものが数多くみられます。すずめは、「すずめの学校」や「舌切りすずめ」などの童謡や絵本などもあるように、一番身近な鳥であるので親しみがわき、子どもたちにもわかりやすいということで、数多く描かれていたと思われます。
 「竹屋コーヒーパーラー」は、築地生まれの喜一が若き日に築地のお隣の銀座で過ごしたコーヒーパーラーを思い起こさせるぬりえです。コーヒーパーラーの店内やボーイさんの様子が詳しく描きこまれ、アール・デコ調のモダンなぬりえとなっています。(館)


フランスのぬりえを特集して・・・
昨年の秋、金子館長は1ヶ月間フランス、フィンランド、ベルリンを訪問し、日本のぬりえの紹介とあちらでのぬりえ文化の取材をされてきました。
その様子はホームページでも詳しくご紹介してます。

昨年は日本とフランスの友好150周年記念の節目の年でもありました。展覧会では日本文化に興味をお持ちの方々に多く来場いただき出会いもたくさん交わされました。
パリでのぬりえ展を記念して、11月から今月いっぱいの4ヶ月にわたりフランスのぬりえを特集して展示しています。
現代のフランスのぬりえは、幼稚園の教育プログラムにぬりえが取り入れられているということから教育的という点が意識されています。例えば年齢ステージごとのぬりえ本が多数発行されているというひとつの特色が伺えます。又、日本のように女児向け、男児向けと分けられず、どちらが塗ってもよいような中性的な絵柄が多いことも特色にあげられます。
子どもの遊びの一種としてとらえている部分の多い日本に対し、フランスでは「運筆」を重視し、画材の正しい持ち方、丸や直線などの線に沿ってきれいにぬれるか、(それにより手指を自由に操り、文字を自在に書けるようになる)、色による情操、などなどに教育的効果を楽しみながら得られるように作られています。

また、もうひとつの側面としてフランスといえば、絵画、アートの国という印象をお持ちの方も多くいらっしゃるのではないかと思いますが、名画を題材にしたぬりえも数多く出版され、ルーブル美術館を始め様々な美術館、博物館にぬりえが販売されています。
日本でなら、「大人のぬりえ」と言ってよい名画のぬりえですが、フランスでの名画のぬりえは、すべて子ども向けです。美術館に見学に来て、思い出にまた名画を塗って覚えようとするためのお土産です。
国を、あるいは街を愛する人も多いのでしょうか、パリのセーヌ川やブルターニュ地方の海などといった風景のぬりえもあります。自分で絵は描けないという人にも手軽に絵心をさそわれ、色を塗る楽しみを味わえることでしょう。
そして、珍しい1930年代のアンティークのぬりえも展示しています。色見本が片方にあり、それを見ながら塗るような形式になっており、当時の子どもたちが塗った形跡も残っています。絵そのものが美しいものや、簡素ですがモダンなデザイン性の高さが伺われるものをパリの蚤の市で見つけました。

きいちのなつかしい作品とともに、フランスの香りをぬりえを通して楽しんでいただけたら・・・と思います。日本のぬりえとの違いも感じていただけるものと思います。
(『美術館便り』でも館長自ら現地の様子をお伝えしています。あわせてそちらもお楽しみください。)

<今月のエントランス展示>今月のテーマは「擬人化」

稲作の盛んだった日本ではスズメは大変身近な鳥ですね。うさぎも古くから愛玩用として輸入されて以来親しみのある動物のようです。調べると、白く赤いお目めのうさぎというのは日本で品種として固定化がされたそうです。

そんな動物たちを擬人化して当時の様々な暮らしのシーンに登場させ、誰にでもわかり易く身近に感じ、楽しめるよう描かれたぬりえの数々。おおらかでユーモラスな作品たちを是非ご覧ください。

<ぬりえ美術館メディア情報>
◆細川貂貂々さんのエッセイ漫画『てんてん手帖』にぬりえ美術館にいらしたときの様子が掲載されています。 講談社952円

【展示室のご案内】
フランスのぬりえ展を開催中です。
昨年10月パリにて開催したぬりえ展の紹介とフランスの現代のぬりえや古いぬりえを展示しています。
きいちのぬりえやきせかえも展示しておりますので併せてお楽しみください

投稿者:Nurie |投稿日:09/02/01 (日)

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