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美術館便り(8月~10月)合併号(1)

平成20年夏の企画展(8月~10月)
昭和10年代のぬりえ展~きいちのぬりえの時代以前にも輝いていた昭和初期のぬりえ~

08年はいろいろ記念すべき年です。
7月29日テキサス州アーリントンでのテキサス・レンジャーズ戦にて、イチロー選手が日米通算3000本安打を記録しました。素晴らしい実績です。8月8日からオリンピックが始まり、日本の選手の活躍を期待されます。
又今年は日本と外国(米国、オランダ、ロシア、英国、フランスなど)が1858年に修好通商条約を結んでから150年の年でもあります。150年を記念して、日本とフランスでは、「日仏友好150年」の記念企画展が開催されています。このような特別な年にパリでぬりえ展を開催いたしますが、大変嬉しく思っております。

私がぬりえ美術館を開館するようになった背景には、フランスに行って、フランス文化のお蔭で、日本にも素晴らしい文化があるということを気づかされたということが大きく影響していると思っております。
日本の文化に関心を持つうちに、ぬりえに結びつき、ぬりえを文化にしていきたいと、この美術館を開館しぬりえの研究を続けております。

日ごろは、昭和20年~30年代のきいちのぬりえを中心に展示をしておりますが、開館6年目となる今回の企画展では、きいちのぬりえ以前の時代のぬりえをご紹介したいと思います。そこには、日本の文化や伝統がさらに色濃く残っています。
どうぞ昭和10年代のぬりえ展をお楽しみください。

【時代背景】
大衆社会の到来
大正末から昭和のはじめにかけて、日本人、とくに都市生活者の生活は大きくかわった。(1)マス・コミュニケーションの発展によって、人々の意識の平準化がはじまり、(2)交通の発展によって、人と物の移動が容易になり、共同体意識が崩れはじめたこと、さらに83)太陽精算による安価で便利な生活用具が普及したこと、による。
和服が機能的な洋服に変わり、都市サラリーマンが中間階級として大きな比重を占めはじめた。現在の日本社会の原型は、このころに姿をみせはじめたのである。女性が職場に進出し、「自由恋愛」も多くなった。(集英社「昭和の歴史3」)

モダン風俗=ア・ラ・カルト
昭和に入ってから、様相は地正気にくらべると洗練されたものになる。それとともに、和装も洋装の影響のせいか、体の線をみせたスマートなものになる。こうしたことは、(1)女学校で洋服を着た世代が多くなってきたことのほか、(2)大正期には和服派だった上流階級や中産階級の上層部が洋装に転向したこと、さらには、(3)当時のことばでいえば、「職業婦人」が増加したことによる。様相はパリ・モードが直接日本にはいってきて、日本も国際的なファッションの一環に組み込まれる。ただし、こうした美しい女性の衣装は、②中戦争によって禁止されたから、モダン風俗の命はわずか10年に満たなかった。
(集英社「昭和の歴史3」)

10年代は、戦争の影が徐々に重く人々の生活を覆っていき、戦争に突入していった時代です。それでも、すべての生活が真っ暗だったかというと、そういうわけでもなかったようです。
「本当に食うや食わずになっていくのは、昭和19年ごろ、それも東京だけで、地方ではヤミで売る物があったのだ」と「昭和生活文化年代記」の中で山本夏彦が書いています。
モガ、モボなどが銀座に現れ、音楽、映画など日本の流行が銀座から生まれていきました。
シャーリー・テンプル、ミッキー、ベティーさん。オーケストラの少女のディアナ・ダービンなどが映画を通じて人気となりました。ぬりえの世界にも当時の流行ものが描かれて、子どもたちの心を満たしていたのです。

「ヌリエヤサン」ぬりえの販売方法

ここに大変貴重な、戦前のぬりえの販売の様子を表したぬりえがあります。昭和20~30年世代の方は、ぬりえは駄菓子屋さん、文房具屋さんで売られているものと知られていますが、戦前はどこで売られていたのでしょうか。 昭和10年代には、ぬりえはバラで売られていたのだそうです。
「縁日でぬりえを買うのが、醍醐味だった」と来館者の方の弁ですが、このキューピーさんの「ヌリエヤサン」の絵は、その当時のぬりえの販売状況が描かれています。

ベティーさんのぬりえ
      
      
ベティー・ブープは、1930年、アメリカのマックスとデーブのフライシャー兄弟の漫画プロダクションが生み出したスターです。1931年、ベティー・ブープは、パラマウントの漫画作品「ビン坊の結社加盟」でビン坊の端役として現れ、その後瞬く間に人気がでて、圧しも押されぬスターになりました。ベティー・ブープの職業をご存知ですか。彼女は、歌手であり、スターなのです。
ベティー・ブープは、日本でも大人気となり、様々な和製ベティーさんの商品が生まれています。お人形は勿論のこと、宣伝広告に、双六、かるた、羽子板、メンコ、そして今回展示しているぬりえなどに描かれました。
ぬりえには、ベティーさんの「藤娘」「お鶴」「花嫁さん」「王女様」等、あらゆる格好のベティーさんがいます。「散歩」に見られる服装には当時としては、大変モダンでおしゃれなスタイルで、エレガントな昭和10年代ファッションの時代の先端がぬりえにも表現されて、少女をとりこにしたことが伺えます。当たりくじの判が捺されたぬりえもあります。ぬりえを買う楽しみを増加させていたことと思います。

1930年代から1960年代までの和製のベティー・ブープのコレクションが本になっていますので、どうぞご覧ください。
「ベティー・ブープ図鑑」安野隆コレクション 光芸出版

投稿者:Nurie |投稿日:08/08/07 (木)

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