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7月の美術館便り

5月の末から6月の初旬にかけて、モスクワにぬりえの調査に行って参りました。
今回は、外務省の日露ビジネスを支援する組織であります日本センターにご協力を得て
現地調査をしてきました。今月はモスクワについてご報告をいたします。
5月末のモスクワですから、まだ寒いのではないかと衣服の準備をしていきましたところ、なんと到着してみると30~35℃の暑さでした。まず、これにびっくり。

今モスクワは、BRICs と言われて大変景気が良いのです。2006年の実質成長率は6%台。プーチン政権が進める資源外交で、石油や天然ガスの輸出収入で国内を潤し、資金力を拡大した企業が積極的な拡大戦略をとり、中産階級にも浸透し、個人消費が旺盛となっています。この結果を証明するものとして、日本の自動車メーカーの輸出は、トヨタ・日産共に2006年は輸出台数を前年比で60%以上増やしており、ロシアの国民が自動車を買う余裕が出てきているのです。
この影響で、空港から市内に入るのに、4レーンとか5レーンある道路ですが、3時間半かかりました。車はスーと走るようにできているものですから、余りの渋滞のために、エンストをしてしまいました。私たちの乗った車だけでなく、路肩に止めている車を何台か見ました。モスクワの名誉のために言っておきますと、帰国するときには、市内から空港まで、わずか30分で到着いたしました。車の渋滞が二度目のびっくり。

モスクワでは、ミルビス日本センターで日本語を勉強されている方々に、ぬりえについての講演をさせていただきました。講演の中で、参加者の方に「きいちのぬりえ」を塗ってもらいました。30名ほどの参加者は、画材がオーバーヘッド用のサインペンの数色しかないにもかかわらず、素晴らしい作品が出来上がりました。日本では見たこともないような塗り方のもの(グラフィカルな模様を入れた作品)もあり、それは特別にいただいて帰りました。ぬりえの上手さに、三度目のびっくり。
このように多くの方が上手にが描けるのは何か理由があるのではということで、様々な施設を訪問してみました。

まず幼稚園を訪問したところ、モスクワでは、幼稚園のプログラムの中にぬりえが組み込まれているそうで、私たちのために、年齢別に子供たちがぬりえをする様子を見学させてくれました。2~3才の子供たちは、一枚に大きく描かれた一個のイチゴなどの大変簡単な絵を見本と同じように塗っていきます。先生は側について、間違いのないように指導していきます。4~5才、6~7才と複雑なぬりえの本に進んでいき、6~7才では筆を使って水彩でぬりえをしていました。
ぬりえの他にも、手先のためでしょうか、ビーズで動物やお花をつくったり、粘土細工をしたりと国のプログラム、市のプログラム、そして幼稚園独自のプログラムを組んで、子供たちの教育をしているそうです。園内には、子供たちの作品が廊下の壁やそれぞれのクラスの壁に飾ってありました。絵の先生もいらして、年齢に合わせて絵の描き方を習っていくそうです。
この幼稚園では、ぬりえをするときにコピーを使ってはいませんでした。一人一冊のぬりえ本が与えられているのです。今まで視察した所では、ほとんどコピーされたものを
子供たちは使っていましたので、驚かされました。四度目のびっくり。
ぬりえ本だけでなく、この幼稚園には、新しい玩具やその数の多さ、種類の多さには目を見張るほどリッパな幼稚園でした。

幼稚園のほかにも、子供たちの教育のために「補足教育センター」というものがありました。幼稚園や学校が終わると子供たちはこのセンターに集まり、美術や音楽、ダンスなどを習うことができ、料金は教材程度を支払うだけでよいそうです。絵の先生のお話を伺いましたが、年齢別にテキスト・プログラムを持っていて、それを使って学ばせているそうです。ある少女の成長が記録されたファイルをみせていただきましたが、6才からの彼女の作品が年齢ごとに保存されて、その成長ぶりが私たちにも分かりました。その少女は今美術系の学生になっているそうです。
このセンターでの絵のプログラムの中に、日本センターのぬりえに描かれた模様を発見しました。このようなところで、モスクワの子供たちは絵を学んでいたのでしょう。
さらに「子供の図書館」というものもありました。子供向けの図書館ですが、市立の子供の図書館が市内に100軒ほどあり、別に国立の子供の図書館もあるそうです。ここでは図書館ですが、本以外にぬりえやビーズワーク、粘土、パソコンなども教えています。

モスクワの本屋さんにも行ってみました。子供向けの美しい絵本や物語の本が大変多くありました。表紙を表にして並べられているのがモスクワの本屋さんの展示の仕方のようで、本の魅力を高めているように思いました。ぬりえは種類が多く、これも絵のプログラムと関係しているのではないかと思いました。芸術性の高い絵が描かれた本が数多くあり、これらの環境も子供たちにいい影響を与えていると思いましたが、大変恵まれた環境の中で教育がされていると感じました。
いずれモスクワの状況は、本などにして発表をしていく予定でございます。(館)

投稿者:Nurie |投稿日:07/07/01 (日)

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