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2月の美術館便り NY出張報告

鬼やらいがすんで、立春となりましたが、まだまだ寒さが厳しい日がつづいています。
それでも、日差しの明るさに春の兆しが感じられまます。きっと春は、もうそこまで来ているはず。
楽しみに待ちましょう。

●NYの小学校訪問
 NYの展覧会の準備とぬりえの調査のために、1月末からNYに行ってきましたので、
今月は、そこで訪問した小学校を、ご紹介をいたします。
この学校は、ブルーミングデール小学校と言って、セントラルパークのずっと北の方にある移民の人たちが多い町の小学校でした。ここには、幼稚園クラスがある小学校で、生徒数は、幼稚園から5年生までで、625人。
ここで勉強するものは、国語、算数、社会、歴史、科学、市民権(いかにもアメリカ的ですね)と、教養面では、体育、アート、音楽だそうです。
そして、この生徒たちの構成は、65%がヒスパニック(メキシコ、プエルトリコなどの中南米のスペイン語圏諸国からの移民)、25%アフリカンアメリカン、10%アララブ系、ロシア系、中米というまさに人種のるつぼです。そのために学校では、先生は英語とスペイン語のバイリンガル(二カ国語)で授業をしていました。


マルティネ先生と子供たち
●幼稚園クラスのマルティネ先生の教室訪問
マルティネ先生のクラスは、5歳から6歳児のクラスで、生徒数は20名。
このクラスにも、ヒスパニック、アフリカンアメリカン、バングラディシュ、など様々な子供たちがいました。そして先生を囲んで、床のマットの上に座って勉強していました。
ぬりえについて、先生にお話を伺いましたところ、
ぬりえは"自由時間"にするそうです。どのようにするのかといいますと、
・自分で線を描きます。
・そこに色をぬる(カラリング)。
・そして解説をさせる(文章を書いたりする)
ぬりえのことを英語では、カラー(色とか色を塗る)に由来してカラリングといいますが、なんだか、これは作文の絵画版のようなものではないかなと思いました。
 いわゆるぬりえ帳をぬるようなものではありませんが、ここでは、上記のように塗ることをぬりえと捉えられていました。

●ぬりえの効用(1)について、先生は、
集中力」と「自分と他の子どもとの違いを認識すること」と上げられました。
 「自分と他の子どもとの違いを認識すること」というのは、今までのアンケーとのどの国にもなかった、初めて聞く回答でした。
アメリカでは、様々な人種がアメリカ人として暮らしているわけですから、その違いを認識するところが基本にあるのだと感じましたが、そのことを幼稚園クラスの子供たちがぬりえを通じて体験していくわけです。
違いがあることを前提にして、アメリカでは自分たちの個性を伸ばしていくのですが、日本では、対人関係に悩む若者の問題が取り上げられますが、同じ日本人でも、人はそれぞれ違いがあることを理解して、恐れずに人間関係を築いていってほしいですね。
   
廊下に張り出された子供たちの作品。自分たちで描いて、塗って、お話をつけています。

●ぬりえの効用(2)
創造力を養う
創作力
オリジナルな表現力を養う」という回答でした。
日本では、「沈黙は金」ですが、外国では、沈黙は評価されないのです。
自分と他人の違いを認識して、自分独自の考えを創りだし、それを表現する力をもつことが、この国では重要なことと考えられているのです。この点にもぬりえが貢献しているわけです。

●絵本について
「完成したもの」
「コンセプトがすでにあるものが絵本である」
その点ぬりえは、自分で想像し、創造する点がよろしいと評価しているのではないかと思いました。

●子供や父兄からの質問
子供達は日本からの珍しいお客様に興味シンシンで私たちを見ていました。そして私たちからの質問の後に、質問がありますといわれたのです。やはり、NYは積極的ですね。
子供たちからの質問は、
・色をいつ学ぶのですか。・えんぴつの使い方をどう学ぶのですか。
→色も鉛筆の使い方も、日本では学校に上がる前から家で覚えてしまいます。日本人はお箸などを使い、器用なので特に学ばなくても鉛筆を使えるようになります。
親からの質問は、
・いくつからぬりえをするのですか。
→2、3歳からしますが、3歳でもとても上手にぬりえをできます。
これらの質問には、驚かされました。日本では、子供が学校に上がる前に、自分の名前
や数字や色など、家で遊んでいる間に覚えてしまうのではないでしょうか?

●愛情と工夫、強い絆
この小学校では、生徒の独自性や個性の育成をはかるために、自分で調べて、作って、展示する、発表するという先生方の愛情と工夫が一杯つまった密度の高い教育と先生と子供たちの強いつながりを感じました。
先生方の就職というものは、先生が自分で就職する学校を選ぶのだそうです。移民の多いこのような学校に来ている先生方は、教育に大変熱心な先生なのですと通訳の方の説明でした。
今回は、小学校を訪問して、ほんの少しだけNYの普通の生活の一部を垣間見ることができました。ぬりえに関するアメリカらしい意見も沢山でてきました。これからも、ぬりえで他者との違いを認識して、創造性を養ってほしいですね。

投稿者:Nurie |投稿日:06/02/09 (木)

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