きいち千夜一夜 No.31 2021年も引き続き「きいち千夜一夜」と題しましてきいちについてご紹介をして参ります。
それから二十数年経って、今年の春、再び喜一さんの個展会場へと足を運んでみたんですが、筆はますます冴えて素晴らしくなったという印象でした。童女画の中に混じって展示されていた最新作の”行灯”という美人画も良かったですね。私の持っている初期の作品とは、また違った線の柔らかさや漂う色気に感動して、先輩から多くを教えられたという感じですよ。
私としては童女画と同じように美人画についても、これからどんどん描いていってほしいという思いです。どちらも奥が深いですからね、両方を同時に極めるというのは難しいかもしれませんね”
美人画”を”余技”と割り切ったとはいえ、美人画を評価してくれる人の存在は、喜一にとってはやはり嬉しいものだ。
「まだまだ、百歳を過ぎても絵を描いていく、その意気込みは十分なんですが、一点一点に時間がかかる。だから、美人画と童女画と両方はやはり難しいですね。
童女画を描く時にしたって、取り立てて時代考証するつもりはなくても、”平安時代の女の子は着物はどうだったか?帯は?履物は?なんていろいろ調べたり、考えたりすると、下絵を描くにもかなりの時間を費やしてしまいますから」
あるいは、画家としてこうした作業をもっと早く始めていたら、自分の人生も変わっていたかもしれないと考えることもある。
「今日あるのは、ぬりえのおかげなんですけどね、逆にぬりえに翻弄されて、一生分を遊んでしまったかなと思うこともあるんですよ。もっとも、その遊びがなかったら、ここまで童女の世界に固執できたか、そのへんはわかりませんけどね」
★参考図書 小学館「わたしのきいち」
今月のエントランス
「おきゃくさまにケーキとソーダすい」
きいち
昭和30年代
夏の時期のお客様には爽やかなソーダ水。緑色のソーダ水が懐かしいです。サイダーも夏のものですね。ラムネという瓶に入った飲み物もありました。今は見ることができなくなりました。
ぬりえ美術館メディア情報
「レトロイズム」http://retroism.jp/ にぬりえ美術館が紹介されました。
展示室のご案内
★秋の企画展「秋は夕暮れ」を展示しています。
蔦谷喜一が晩年に描いた童女画の絹本を展示しています。
★館内のぬりえコーナーは、コロナ感染防止のためにしばらくお休みをしています。
ご了承の程お願いいたしまうす。