きいち千夜一夜 No.27
2021年も引き継き「きいち千夜一夜」と題しまして、きいちについてご紹介してまいります。
【きいちブーム再び③】
「ザ・ギンザでのぬりえ展の話が持ち上がっても、私の手元には原画がほとんどなかったものだから困りましたよ。そのころには、なにかの記念にと、家内が茶箱二つにまとめておいたぬりえさえも、とうに処分してしまっていましたから。
でも、それでも展覧会ができたのはファンの方のおかげ。しまってあった昔のぬりえをわざわざおくってくれたんです」
その後、「きいちのぬりえ」展は東京だけでなく、盛岡、名古屋、飯田、函館など各地でも開催され、会場は連日大盛況となった。これにはだれよりも喜一本人が驚いた。病気入院中の患者が医者の許可を得て、わざわざ展覧会場へと足を運んだり、懐かしいぬりえとの再会に涙を見せる女性の姿もあった。
以後、ショップやデパートの広告を始め、女性や子供に関連の深いイベントなどの広告に、喜一の絵は良く起用されるようになる。また、懐かしい存在であると同時に、清潔感があって柔和なその風貌から、喜一本人に対するテレビ出演の依頼も増え、喜一は多くのトーク番組に出演し、ぬりえで一世を風靡したころのことを語った。
「でもね、私はマスコミ嫌いというか、どうも人が多く集まるところは苦手でね。テレビ局なんかに出かけようものなら、すぐに帰りたくなってしまう。だから、番組の途中でも私の出番が終わると、サッサと却って来ちゃうのね、担当者は、番組終了後にハイヤーを用意してありますからって言ってくれるんだけど、それまで待っていられないんだ」
☆参考図書「わたしのきいち」小学館
今月のエントランス
年代:昭和30年代
作者:きいち
ウェディングドレスの花嫁さんの顔にクローズアップして描いたぬりえ。
髪に透けた生地のベールを被って、遠くを見つけている花嫁さんがとても崇高に見えます。
ぬりえ美術館展示情報
〇3月~5月まで春の企画展として、きいちの肉筆である童女画の絹本を展示しています。
日本画には紙に描く紙本と絹地に描く絹本の二種類があります。きいちは美人画を学びましたが、基本的にそれらの絵は絹本で描いています。
今回の「弥生」と「エンジェル」の2作品だけは紙本となっています。
展示室のご案内
☆「春の企画展「春はあけぼの」を展示しています。蔦谷喜一が晩年に描いた童女画の
絹本を展示しています。
☆館内のぬりえコーナーは、コロナ感染防止のためにしばらくお休みをしております。ご了承の程お願いいたします。