きいち千夜一夜 No.10
今年はきいちの生誕105年に当たります。これにちなみまして、「きいち千夜一夜」と題しまして、きいちについてご紹介したいと思います。
娘が幼稚園に上がると、妻のまさは親戚や知り合いの娘を住み込みで預かって、裁縫を教えることをするようになる。
しかし、これはあくまでボランティアで始めたことで、一円の儲けにもならない。お針の修行といっても、蔦谷家には、当時の丁稚奉公をよしとするような風潮はないから、娘たちを預かれば、その食事の準備などにお手伝いさんを雇ったりする。まるで賄いつきの花嫁学校。これではむしろ出費のほうがかさむというものだ。
さらに極めつけは、踊りの発表会。一年おきにあるおさらい会の費用は参加するだけでも約三十万円。この日のために家族はもちろん、弟子や使用人にいたるまで、一家総出で着物を新調するから、喜一が稼いだお金など右から左へ、身につく間もなく消えていくのである。
「十畳の部屋は、踊りの稽古には絶好の場だったので、名取になってからは近所のおばさんを集めて踊りを教えたこともありました。月謝はねぇ、ほとんど頂いてなかったんじゃないかな。みんなで踊りの稽古を楽しんで、その後はしゃべりながらお茶を飲んで、無料のカルチャーセンターのようなものでしたよ。その中には、あの、ビートたけしのお母さんなんかもいてね、いつも息子のことを”たけしのばかが・・・”って嘆いていました。将来あんなに才能を発揮するなんて、お母さんの話からは、とうてい想像できませんでした」
この十畳間に、出始めのころのテレビがおかれた時には、近所に住む多くのプロレスファンで賑わった。お針のお弟子たちを集めて、みんなでおはじきをして遊んだり、また、みんなが寝静まると、まさとふたりでトランプ遊びの”神経衰弱”に興じたのも、この十畳間だった。
*参考図書「わたしのきいち」小学館
「おだんご」
作者:きいち
年代:昭和30年代
お団子をお皿に持って、家族みんなで食べるのでしょうか。昭和20~30年代はお団子は家で作って、甘辛のたれをまぶして食べていました。町屋の下町では、餅菓子屋さんがまだ沢山ありますので、美味しいお団子を食べることができます。
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