きいち千夜一夜 No.8
今年はきいちの生誕105年に当たります。
これにちなみまして、「きいち千夜一夜」と題しまして、きいちについてご紹介したいと思います。
「きせかえは私自身が復活させたかった。当時、ぬりえと違ってきせかえは下火でしたからね。実際の人形遊びも楽しいけれど、紙の世界にも昔からこんな遊びがあるんだと、子供たちに知ってほしかった」
きせかえについては、B4程度の大きさのものを石川松声堂と山海堂、それぞれに毎月四枚ずつ納めた。ぬりえはジンク版という金属の板に特殊な墨を遣って絵を描くまでが喜一の仕事。描いた部分が腐食するので、それを印刷するのだ。五色刷りの袋の場合は、喜一が加味に五色で描いたものを、職人がそれぞれの色に描き分けてからから印刷するが、いずれにしろぬりえはそれほど喜一の手をわずらわせるものではなかった。
しかし、きせかえとなるとそうはいかない。人物や洋服の型をおこして、一つ一つ紙の上に置いては寸法を取っていく非常に手間のかかる作業だ。できるだけ余白を少なくして、さまざまな要求を盛り込むことも大切で、喜一のきせかえにはお洒落な洋服や着物に混じって、ブーケや帽子、ハンドバッグ、人形といった多くの小物が添えられていた。
「私の描くのは女の子だけじゃなかったでしょ。お父さん、お母さん、お兄さんやお姉さんといった家族もちゃんといてね。そういうものを描き入れるときには、一応家族構成なども考えながら描いていたの。リカちゃんファミリーならぬ、きいちファミリー。
それからきせかえを描いていておもしろかったのはバッグの色なんですが、オレンジや黄緑などの中間色を使うと余りうれゆきがよくなくてね。
*参考図書「わたしのきいち」小学館
今月のエントランス
「おゆうぎ」
年代:30年代
作者:きいち
新調したお洒落なワンピースに、頭には大きなリボンをつけて、覚えたダンスを可愛らしく踊ります。お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんも見にきていますよ。
ぬりえ美術館メディア情報
○BSフジ「からだ研究所」にて、ぬりえ美術館が紹介されます。
展示室のご案内
○8月~10月は秋の企画展を開催しています。
昭和10年代のぬりえや30年代の俳優さんなどの珍しいぬりえやきせかえを展示しています。
○館内にはぬりえ体験コーナーがあり、自由にぬりえを塗って楽しんでいただけます。