「突然電話がかかってきて、これから絵を見に行っていいかってことでしたよ。訪ねてきたのは確か、女性が一人に、男性が三人くらいでしたね。
女性のファンならわかりますけどね、男性が多くてね、ちょっと驚きました。それに、いい大人が私の絵を見るたびに歓声を上げるんです。
なんだか不思議な気がしましてね。子供ならわかるけど、大人がなぜこんなに喜ぶんだろうって」
これを機に長谷川は、忘れ去られようとしていた喜一の存在を世の中にアピールしようと動き始める。
喜一の絵を起用してもらうために出版社に働きかけたり、知り合いに取材を頼んだり、イベントを仕掛けたり、この効果はやがて多方面に波及し、喜一の存在は改めて認識されるようになる。
昭和五十三年の資生堂ザ・ギンザホールでのぬりえ展や当時若者に人気だった雑誌<ビックリ・ハウス>を主催のアート展に、常連アーティストに混じって、喜一も数々の作品を発表した。
Posted: Ziromin : 19年03月12日 |