平成28年秋の企画展は、「ぬりえはファッションのテキストブック」~お洒落の原点はきちのぬりえだった~と題しまして、きいちの描いた素敵なファッションのぬりえの数々を展示いたします。
NHKの朝の連続ドラマ「とと姉ちゃん」において、戦後の物資のない時代の庶民に対して、服やインテリアをお金をかけずにどのようにしたらいいかをとと姉ちゃんの出版社の本で提案するということを放送していましたが、戦後すぐの時代を経験していない私のとっては、そうだったのか?と当時の事情を知ることが出来ました。
物資がないわけですから、お店に服が売られていません。生地がお店になければ、服を作れません。服の作り方を知らなければ、服は作れません。今は何でも豊富ですから、物がないということはどういうことかを想像することさえ難しくなっています。
生地がないとか、服の作り方をしらなければ素敵な服は着られないということで、本の中で「直線断ちの服」と称して着物を切って縫うだけの服を提案しています。これなら洋裁を知らない人でも誰でも簡単に服が作れるようになります。
「きいちのぬりえ」はこのような戦後すぐの昭和22年から身近な駄菓子屋さん、文房具屋さんで売られていました。
子ども用の服は、婦人雑誌の中に取り上げられていましたが、この婦人雑誌のデザインの代わりをなしていたものが、きいちのぬりえの少女たちの着ている服であると言えるのではないかと思います。
「きいちのぬりえ」はぬりえの中でも特に人気があり、毎月大変な数量
(月平均100万部、多いときには160万とか200万部)が販売されていました。その人気の理由は
① ぬりえそのものが好き。②少女が可愛い。③少女の着ていた服が素敵。
そんな服が着てみたい。
ということが揚げられます。
特に③の理由が大変大きいと思います。毎日、毎日ぬりえをして、素敵な服の少女を見ているうちにファッションの感覚が自然に高まり、養われていったと思われます。
際にぬりえ美術館にいらした方が、きいちのぬりえを洋裁士さんのところに持って行って、作ってもらったとお聞きしたことがあります。
和20年~30年代は、お出かけ用のよそゆきと日常の際の普段着というものに分かれていました。それで、今回はお出かけのよそゆきと普段着、さらに夏のお洒落着、行事に見るお洒落な服をご紹介いたします。
映画の中には、このようなドレス姿があったかもしれませんが、自分たちの周りには見られない姿でしたので、憧れてしまいます。いつかこういうドレスを着てみたいと願っていました。