3.昭和30年代後半
<昭和30年代後半から昭和40年前後>
テレビが普及してくると、子どもたちの遊びも変わってきます。そんな時代につれて、きいちのぬりえの表情、表現も変わっていきます。「ながいかみ」や「きもの」にみられるのが、この時代の特徴です。
①目がアイラインを入れたように切れ長になっている。前述のはっきりとした「のの字の目」から切れ長な目に徐徐に変化していきます。
②足がすっかり細くなります。
③髪の毛が、黒く描かれなくなり、洋服も柄がなく、線のみになって現代のぬりえと同じようになってきます。
この作風になる途中には、「おまつり」や「たまいれ」のように、髪を手束のながれのように描いたぬりえ時代があります。
ぬりえは子どもたちが塗るものですから、子ども向けにきいちも描いております。
ぬりえ美術館を訪れる若い方には、「きいちさんの絵は色っぽい」と言われることがあります。私自身は、子ども時代にリアルタイムできいちのぬりえを塗っていたためか、そのような認識はありませんが、「ながいかみ」や「きもの」の少女には、色っぽさがあるかもしれません。
画家は、歳をとっても、色っぽさとか艶っぽさというものが必要だと思いますが、子どもむけの絵なのに、不思議な気がします。
今回の企画展では、年代別にぬりえの変遷をご紹介しましたが、来館される方々は、ご自分が塗っていたころのぬりえの絵がお好きです。子どものころの思い出として、強く頭に残っているからでしょう。
いずれの時代も、きいちの少女の可愛さに変わりはありません。顔をかたむけるしぐさ、
足元、手先など、きいちの日本舞踊で培った形の美しさが反映されています。このしぐさの美しさや愛らしさはいつの時代にも、気持ちよく受け入れられるものだと思います。
現代のお子様にも受け継がれてほしいと願っております。