東京都荒川区町屋 土日曜のみ開館
開館時間:(3月~10月)12:00~18:00 (11月~2月)11:00~17:00

ぬりえ美術館

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6月の美術館便り

梅雨入りはしたものの、空梅雨が続いています。今年の夏が心配ですね。

2年ぶりに「海外のぬりえ調査」をしてきました。5月20日から6月4日まで、スペインはマドリードとバルセロナの2都市で実施してきましたので、概要をご報告いたします。
1.日本スペイン交流400年
今年は日本とスペインの交流400年にあたります。交流400年とは、1613年(慶長18年)仙台藩主伊達政宗が支倉常長を大使としてスペインとローマに派遣した慶長遣欧使節団が翌1614年(慶長19年)にスペインに到着し、フェリペ3世に謁見した時に遡るそうです。
この「日本スペイン交流400周年」の開幕記念行事にご出席のために、皇太子殿下が公式訪問をされます。このような記念すべき年にスペインで調査を実施できたのは、大変幸運であったと嬉しく思っております


2.スペインの印象
日本が空梅雨で、天候が例年とは違いおかしな天候ですが、ヨーロッパも異常な天候でした。マドリートとバルセロナのいずれもコートかジャケットにマフラーを巻いて、丁度いいほどで、太陽が燦燦と輝くという日はほんの数日でした。世界的に異常気象なのだと感じました。

マドリードでもバルセロナでも、大きなプラタナスの並木がいたるところにあり、緑の大きな葉の重なりが日陰をつくり、まるで都市の中にいながら森の中にいる気分を感じさせてくれます。
南の太陽の強さを軽減してくれる大事な並木なのでしょう。
また朝方になると歩道を水で綺麗に洗い流しているのです。マイヨール広場でもバルセロナのゴシック地区でも、ホースで水を巻き清掃していました。この光景にはビックリを通り越して、感激しました。清掃車も10数種類はあるそうで、スペイン人は綺麗好きなのだと聞かされました。家の中もとても綺麗にするそうです。
高校生時代に、シエスタのことを学びましたが、スペインではいまだに14時から16時まで
昼食、昼寝の時間でお店もクローズするところがあります。スペインでは昼食が一番大事な食事の時間だそうですので、たっぷり2時間のお休みがあり、ご自宅に帰って食事をするかたもまだまだいるそうです。10時にはお茶の時間もあります。
世界のグローバルスタンダードを考えると、日本であれば、世界との競争に打ち勝つために、シエスタの時間を変更するか、なくしてグローバルスタンダードに変えてしまいそうですが、そうでもない国があることが分かりました。何が大事かという価値観が経済や仕事重視の日本人と違うのだろうと思いました。なかなかその価値観を変えることは難しいですが、その価値観の違いの一端に触れることができました。


3.ぬりえの調査
例年の調査と同じように、スペインでも幼稚園(スペインでは学校と言われている)、美術館、図書館、本屋さんを巡り取材をし、お母さん方からもご意見もお聞きしました。
スペインの幼稚園では、ぬりえを使った授業が盛んに行われていました。いずれの学校でも、絵画教育を大変大事に考えられていることが分かりました。幼稚園では、テキストがあり、そこに描かれた絵に色をつけたり、切り取ったり、絵を塗りながら様々な学びに結びつけていました。
大変活発に活用されていましたが、日本のいわゆる「塗り絵」、例えば「きいちのぬりえ」や「キャラクターのぬりえ」の塗り絵の概念を変えたほうがいいのではないかと、沢山の幼稚園を見学して思いました。もちろんスペインでも本屋さんに沢山の塗り絵が販売されていますし、幼稚園でもマンダラの塗り絵を塗っています。しかし幼稚園のテキストや授業のなかでの塗り絵を考えたとき塗り絵とは大きな意味での「色を塗る」ことではないか、"色をぬる"という方向で考えたほうが適当ではないかと思いました。
私は従来様々な国の塗り絵を調査してきましたが、今までは塗り絵=きいちのぬりえのような塗り絵と思って調査をしてきましたが、それだけに限定するのではなく、「色を塗る」ことまで定義を広げたほうが自然ではないかと今回強く思うようになりました。


スペインでは、小学校に入学するまでに字を読んで書けるように幼稚園に要望されているそうで、abc や 1,2,3の数字に色を塗って覚える等に使われています。塗り絵をする際には、1.鉛筆の持ち方を教え、2.輪郭からはみ出さないように、3.きれいな仕上がりができるように努力すること、4.作業配分を考えること、5.自分の住んでいる世界を知るために同じ色で塗ること、例えば木の葉は緑色、キリンは黄色等。6.きちんと座って塗ることなど、子供たちが色を塗ることから学ぶことは沢山あるようです。
今回施設にいた子供を引き取ったというお母さんとお話をする機会がありました。彼女は現在5歳で、2年ほど前からお母さんと一緒に暮らしています。施設では塗り絵をすることがなかったそうで、塗り絵は輪郭からはみ出してはいけないことや色の名前を知らなかったそうです。すっかり私達は忘れてしまっていますが、色の名前なども家や幼稚園で色を使って塗りながら、覚えていたものなのですね。


最後に一番強烈なスペイインの印象ですが、どの幼稚園でも園長先生の個性が教育方針に生かされているそうで、「この幼稚園でされていることが、スペインの全てと思わないでください」ということでした。まさにこの言葉どおり、訪問した幼稚園では本当にそれぞれに違った方法で勉強をしていました。
スペインの調査報告の詳細は、別途HPでご案内をいたしますので、どうぞお楽しみに。(館)

Posted: Nurie : 13年06月09日 | 美術館だより

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