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「ロン・ミュエック展」

金沢21世紀美術の「ロン・ミュエック展」に行ってきました。
金沢21世紀美術は、開館の翌年の2005年度に来館者が135万人という、現代美術を扱いながら大変な集客をしている美術館として関心があり、いつか行きたいと考えていました。
そこにロン・ミュエックの「ガール」の彫刻作品を金沢21世紀美術のHPに見つけ、いてもたってもいられなくなり、昨日見学してきました。

「ガール」の画像は、こんな感じです。
http://www.kanazawa21.jp/exhibit/mueck/index.html
ロン・ミュエック展」の「ガール」の画像をみて、私の周りの人たちは10人中9人が、「気持ち悪い」と顔をゆがめました。たまらなくかわいい」と思ったのは私一人でした。

金沢は、東京と変わらず朝から暑かったのですが、さすがに21世紀美術のあるあたりは、香林坊や兼六園のちかくで、大変に緑の多い地区でしたので、すこし日陰にはいりますと木々を渡る風が心地よいのでした。
金沢の街は、観光客の方が多いと思いますが、途中いろいろな場所で、道をたずねたのですが、誰もが非常に親切に教えてくれた事に大変感激しました。帰ってきた東京駅のインフォメーションで訪ねたときの印象とは大きな違いでした。街の印象は、その街で出会った人でも印象が変わりますので、気をつけたいと思いました。

21世紀美術は、緑の芝生の中に、真っ白とガラスでできた2階建ての低層階の美術館で、円形の建物です。低層であるので、美術館といっても、見る人を威圧するような感じがありませんでした。自然の中に、そこにあるよ、という穏やかな印象でした。

丸いガラスの中から美術館の周りをぐるっと見ることができます。景観的にも大変優れた場所にありますので、ぐる、ぐると丸い建物にそって見て回ると、外の木々の緑や古い建築物が美しいいので、眺め甲斐がありました。
そして、ガラスからの眺めは、金沢21世紀美術の展示物のひとつである「プール」の下から外をのぞくような感じを受けました。美術館のガラスが「プール」の水であり、ガラスを通じて水の外の景色をみているような印象を受けました。ガラス一枚ですが、現実の景色でないものをみているような印象だったのです。建物全体が造形物、展示物であるのかもしれません。

金沢21世紀美術は有料ゾーンと無料ゾーンに分かれており、「ロン・ミュエック展」は有料(大人1000円)でした。無料ゾーンには、家族連れ、お友達と、仲間でと一人でなく、連れ立ってきている姿が目立ちました。
円形の建物にあわせて、ミュージアムショップも、案内板のスペースも円形になっていました。地下にいくエレベーターもガラス張りで、ロープで動くのではなく、ガラスの箱を油圧で上下するものでした。ガラスだけの箱ですっきりしていて、このエレベーターも美しいと思いました。

今回は「ガール」を始め7点の作品が展示されていました。たった7点ですが、ロン・ミュエックは今まで35点の作品しかつくっていません。そのうちの7点が金沢21世紀美術にきたのです。
最初は、「マスク」、ロン・ミュエック自身と思われる男性の顔。後ろは空っぽです。
最初から大きな顔(775X118X85CM)にびっくりしたというのが、本音です。無精ひげ、目を閉じた目の周りのシワの感じなど、生きているようです。皮膚の下の血管の様子なども人間そっくりで、この大きさもロン・ミュエックの作品の特徴のひとつです。
次は、「舟の中の男」(人物:高さ75CM、舟42.1X139.7X122CM)本でみていたものより「小さく」、意外な感じでした。
3つめは「マスクⅢ」(155X132X113CM)黒人女性の顔。
途中、マラガの「ロン・ミュエック展」の展示の様子をVTRで流していました。
次の作品は、「イン・ベッド」(162X650X395CM)巨大な女性がベッドに横たわった像です。ここまでは、ひとつの部屋にひとつの作品の展示。
途中、別のVTRで、作品の完成の様子を流していました。
次は、ロン・ミュエックの作品の皮膚や目や完成前の試作品などのばらばらなパーツの展示。子どもたちの中には、怖がって入ってこない子どももいました。

とうとう「ガール」(110X 502X 134.5CM)との対面です。
「ガール」は、映像でみたままに展示室に横たわっていました。口をゆがめ、薄目をあけて、足をふんばっていました。5メートルもある「ガール」を、前から、後ろから見ました。赤ん坊の皮膚感、やわらかい感じ、髪の毛のぬれたような感じ、うっすらと見える血管や体につく血、体のシワの様子、足のつめなど、なにからなにまで、ほんものそっくりでした。
5メートルの巨大なサイズが本物そっくりであることに、驚かされますが、やはり一番の魅力は、顔、特に薄目と口元です。世の中に生まれてきたばかりなのに、意思の強さを感じさせ目をしています。まだ見えないはずなのに、世の中をにらんでいるようです。
ある人々にとっては、怖い、気持ち悪いと感じさせるのは、あまりにそのまま、本物そっくりだからでしょう。
しかし、もし「ガール」が本当の赤ん坊のサイズであれば、これほどには話題にもならなかったでしょう。5メートルもあるから、さらに凄い作品ということになったとおもいますが、もし、「ガール」のちいさいフィギュアが売られていたならば、1個購入したいと思いました。
「ガール」一体で、東京から金沢までひきつける力を持っているのです。近年の代表作が「ガール」だそうですが、この厳しい21世紀の世界の大変さを「ガール」に託しているのでしょうか。

「ガール」と「野性的な男」と「寄り添う恋人たち」の3点は、大きな部屋にいっしょに展示がされていました。「野性的な男」(285X162X108CM)も大きな男性です。体毛、足の指、手の指のシワなど、その表現は緻密です。「寄り添う恋人たち」(14X 65X 35CM)は、小さい作品です。表情から疲れたような恋人たちと写りました。

ロン・ミュエックの作品は、ファイバーグラスやシリコンなどの素材で人間の身体を表現していますが、蝋人形館の蝋人形のような死んだような人形ではなく、生きているようにその表現が緻密で、体毛、皮膚感、シワ、肌の色、皮膚のしたの血管など細部に非常にこだわっています。
作品のサイズも人を驚かせます。大きい作品には、大きさで圧倒するだけでなく、その存在の意味を考えさせるなにかをもっています。
7点の作品がありましたが、「ガール」1点で、十分に満足をする展覧会でした。

金沢21世紀美術館の2007年度の入館者数は133万4,000人で、前年度より約0.4%、4,800人増だったそうですが、2008年はこの「ロン・ミュエック展」などで(開館翌年の)2005年度に記録した135万人を超えるのではないでしょうか。
「ロン・ミュエック展」は金沢以外、東京や外国からのお客様も大勢来ていると美術館の方が言っていましたので、そうなることを期待しています。
東京でも「ロン・ミュエック展」が見れることを希望しています。(館)

投稿者:Nurie |投稿日:08/07/25 (金)

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