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ドイツのぬりえ展報告と「ぬりえを旅する」発行案内

あけましておめでとうございます。今年も皆様に楽しんでいただける企画でぬりえをご紹介していきたいとおもいます。今年もよろしくお願いいたします。

1.ドイツのぬりえ展の報告
昨年11月11日より12月2日までドイツのカールスルーエ市で開催いたしましたぬりえ展につきまして、ご報告をいたします。
1-1.ibz国際交流センター
ドイツは人口820万人ですが、トルコ人が1%になるなど移民の多い国です。そこで、カールスルーエ市の国際交流センター(以下、ibz)は、カールスルーエに来た移民の人々をはじめ外国の人が住みやすいように、又早くカールスルーエの暮らしに溶け込むように支援をしていくその中心センターであり、それぞれの国の人々が自国文化に誇りを持ち、守り、維持しようとしている様々な国の文化や伝統をお互いに尊重し、交流をはかっていく場であります。今年1年で150以上ものイベントが開催され、交流をしてきました

このibzならびに独日協会との共催で開催しましたが、まさに上述したibzの趣旨がドイツの人々に日本のぬりえを紹介し、ぬりえを通じて日本の伝統、文化を知っていただける最適な場所であるからでした。
展覧会の会期中、8回ほどロシア、オランダ、トルコなどの様々な協会や勉強会のメンバーが訪れ見学されました。ぬりえ展のDMやぬりえの用紙がカラフルでかわいいと、幼稚園などで使用されるために持ち帰えられていきました。

2.オープニングセレモニー(11月11日)
セレモニーは、独日協会のコーラス部の歌「村祭り」「紅葉」で始まり、日本語学校の子どもたちが「かごめかごめ」「はないちもんめ」などを歌い、メインとして、私の「ぬりえ文化 その歴史的背景」を約30枚のスライドを使い、ぬりえの発祥、きいちのぬりえの解説、ぬりえの現在と未来について、講演をしました。
講演後すぐに、質問をしに来られたドイツ人夫妻がいました。「美術館の建物が映っていましたが、これは公共的なものか、それともプライベートのものか」と質問されましたので、「個人でしているものです」と答えますと、「このような活動を個人的にされていることを、尊敬をします。カールスルーエに来てくれてありがとう」と感激されました。共感者がいたということは、今回の講演を理解してくれたといえるのではないでしょうか。
終了後、ぬりえを見る人びとに感想を聞いてみると、
Q.きいちのぬりえには、西洋が混じっているような気がするが何故か?(50代男性)
A.それは、このぬりえが戦後に描かれたものである。戦後、日本にはアメリカ文化がどっと入ってきた。先進国のアメリカに憧れた日本人は、西洋風なものを受け入ていたのですとご説明しました。
○僕はカワイイものが好きだから、とても興味がある。(30代男性)
○すべての絵にタイトルがついていて、そのタイトルの意味が面白い。(11歳少女)
○とてもきれいで楽しかった。(11歳少女)
○平和で純粋な喜びを伝えるもの。(60代男性)

今回ぬりえコンテストを開催したところ、ぬりえをした人からは、以下のような感想をいただきました。
○とても楽しく、ファンタジー豊かな気持ちになれた。(11歳少女)
○自由にぬりえをすることができてすばらしかった。その絵が後にどんな色彩の絵になるのか自分で決めることができた。(13歳少女)
○とても落ち着いた気持ちで集中してぬりえができた。(11歳少女)
○塗っていくうちにだんだん楽しくなってきた。(60代男性)
今回は、日本語学校の子どもたちがコンテストに多数参加してくれましたが、少しでもこのぬりえを通じて日本の文化や伝統、風俗に触れ、知ることができるので、ぬりえつかってほしいと思いました。
ぬりえは、集中できる、心の安定、創造力などの様々な効果を持っています。効用を理解していただいて、もう一度ぬりえについて考えていただきたいと思いました。

3.日本人気
ドイツのカールスルーエでも、首都のベルリンでも今、日本が大変人気です。ぬりえ展を共催してくださった独日協会のメンバーは、約200人ですが、そのうち日本人は17、18人で殆どがドイツ人です。
毎月一度、カールスルーエにある日本レストランで例会を開催しています。最近は、マンガファンの若者たちもメンバーになり、活躍をしているそうです。マンガというと、カールスルーエの本屋さんでも、「マンガの描き方」なるセミナーを開催し、小学生も参加するほどマンガが一般的になりつつあり、その普及ぶりに驚かされました。
マンガコーナーには、日本のマンガはもちろん韓国のマンガも入っており、いずれその中にドイツ人の描くマンガがはいてくる予感を感じました。

寿司も大人気で、寿司が縁で独日協会の会員になった人もいました。ぬりえ展のオープニングパーティーでも、のり巻きが提供され、真っ先に無くなるほどの、大人気の食べ物でした。
ベルリンでは、「一心」という寿司店に行きましたが、体育館ほどに広いレストランでありましたが、満席で、外に待つ人の行列が溢れていました。
寿司が健康的であると考えられていますが、お米が欧米の人にとっては、ベジタブルすなわち野菜と考えているようなのです。私の知人は、お皿にお米だけ盛って、それを食べている外人を見かけたそうですが、野菜サラダでも食べている感覚なのでしょう。
様々なきっかけを通じて、日本への関心がたかまることは日本にとってもメリットがあります。ぬりえもそのような日本の魅力の一つになれたらいいなと願っています。

4.「ぬりえを旅する」発行
「ぬりえを旅する」金子マサ・山本紀久雄 (小学館スクウェア)1200円(税込)

06年はニューヨーク、07年はドイツでのぬりえ展、その間にも海外に行き、ぬりえの調査をしています。幼稚園や子どもを持つ親たちへのインタビューやアンケート取材をしたり、出版社、図書館ならびに教育関連施設を訪問して調査をしてきました。
これまで訪問した国から、まずアメリカ、チリ、ロシア、イタリア、ベトナムの5カ国を調査、分析いたしました「ぬりえを旅する」を昨年12月21日に上梓いたしました。
日本のお客様からは「外国にもぬりえがあるのですか」とよく聞かれますが、外国では、「日本にもぬりえがありますか」とは言われたことはありません。しかし、大人のぬりえは外国にはまだありません。これはほんの一部ですが、それぞれの国によってぬりえの捉え方、認識には当然のことながら5ヶ国それぞれに違いがありました。
子どもなら誰でもするものと思うぬりえも、その国の経済状況によっては、ぬりえをしたことがないという国の人もいました。それとは反対に、積極的に、教育プログラムの中に取り入れ、子どもたちの学力向上に役立てている国もありました。
ぬりえは創造力をなくすという考え方が昔からありますが、イタリアでは、幼稚園、小学校でぬりえをしたところ、しないところで比較をしたと研究発表があり、はっきりと絵に違いが現れたと識者の方が言っています。ぬりえに創造力がないという点を、今こそ見直す時期にきているのではないでしょうか。

私たちの想像を超えた認識、捉え方には、これから日本がぬりえについて考えるときに、非常に参考になると自信をもってお勧めいたしますので、ぜひ、ご一読していただきますよう、よろしくお願いいたします。
ぬりえ海外レポートの欄をご参照ください。

投稿者:Nurie |投稿日:07/12/31 (月)

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コメント

きいちぬりえをモデルに押し絵を作るのが趣味です。今月の1月にぬりえ美術館へ訪れます。今からわくわくしています!

投稿者 夢見 : 2008年01月04日 16:27

夢見様
可愛いお人形をお作りですね。1月のご来館をお待ちしています。

投稿者 ぬりえ大好き : 2008年01月04日 17:11

美術館の受付や監視のお仕事をしたことがあり、月に2,3回ならばぬりえ美術館のお仕事を経験してみたいのですが、年は44歳です。

投稿者 梶沼美保 : 2009年09月29日 09:52

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