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プライスコレクション若冲と江戸絵画展見学記

今回の展覧会はアメリカの実業家、ジョープライス氏(76)が集めた江戸時代の個性派絵師の絵を展示したものです。
作品は、伊藤若冲を中心に、丸山応挙、長沢芦雪、森狙仙、酒井抱一、鈴木其一、曽我蕭白など、プライス氏が自分の好きになった絵、美しいと思った絵を集めたもので、
1章正統派絵画、2章京の画家、3章エキセントリック、4章江戸の画家、5章江戸琳派
にわけて構成してあります。

開催期間:06年7月4日(火)~8月27日(日)
会場:国立博物館・平成館
会場アクセス:JR上野駅 徒歩10分
料金:一般1300円 大学・高校生 900円 中学生以下無料

今回のコレクションは、1953年、プライス氏の卒業記念に若冲の「葡萄図」」などを購入したのがきっかけで、18世紀~19世紀の江戸時代のものを収集し始め、その後、悦子夫人と結婚して、近年は、桃山時代、明治時代の作品にまでコレクションの幅を広げているそうです。

若冲の印象というと、精巧に描かれた鳳凰のような鶏を思い出す人が多いことと思いますが、私もその個性的な印象に惹かれて今回の展覧会に足を運びました。
初日に見学したのですが、それほど込んでなく、ゆっくり見ることができました。
今回は、展示された作品が江戸時代の著名な絵画を集めたということでなく、個人のコレクションであるという点で、大変面白い作品が集められているということに感激しました。もし、これが日本であれば、有名になっていただろうか、展示をされただろうかというような印象をもった作品が多かったからです。
例えば達磨と遊女がさかさまな格好をした姿など、思わず笑ってしまったのですが、このようなテーマまでコレクションに入っていました。この作品は氏がコレクションしなければ、見られなかったのではないかと思いました。
そのような意味で、個人コレクションは、その人の目、審美眼で集められているものですが、従来の展覧会にはない面白さを感じました。癖があるかもしれませんが、その癖が好きであれば、病み付きになるというようなものです。

展示
1章では、墨絵というと中国の山水のイメージから、墨の線という印象が強かったのですが、墨絵の新しい印象持つことができました。墨絵にも様々な色がだせる。色を感じたのでした。
2章では、円山応挙の孫の応震の麦稲図屏風の麦と稲の風になびくようすに軽快なリズム
、音楽を感じました。また撫子に蜻蛉図では、繊細な細い葉の撫子に、軽やかな蜻蛉の飛んでいる絵に、日本の秋の儚い美しさを感じました。
3章では、若冲の絵に堪能し、特にタイルのような升目(86000個)に動物を描いた屏風が強烈な印象です。プライス氏は、この絵をご自身のお風呂場に作ったそうですが、なんと羨ましいことでしょうか。
4章では、江戸の文化は、歌舞伎と遊郭を中心とした都市文化ということで、浮世絵の美人画が多くみられました。この中のひとつに、先ほどお伝えした達磨と遊女の絵があります。
5章では、屏風の作品を展示していましたが、京の町屋の玄関に屏風を飾っておくには、人目をひくものが注目されたそうです。私は、鈴木其一の貝図に注目。貝の産毛の質感までが感じらました。

お勧めのポイント
なんといっても、ガラスケースなしで、光を変えて展示作品を見られることです。
私の美術館でもそうですが、照明は一定です。しかし、今回の展覧会では、昔は自然光(日光、月光)や蝋燭の灯りで鑑賞をされていたのだからと、プライス氏の絵画、日本画の見方への強い要望で、光が明るくなったり、暗くなったり変わるのです。そうすると、展示されている作品が、動くように、変化するのです。

今回の展覧会では、個人コレクションの意味を感じました。そしてその個人の「「見方」「切り口」というものが非常に大事ということが分かりました。プライス氏の見方、選定によって、従来の日本の美術展覧会とは違ったものが選ばれていたと感じたからです。
また同じものをみても、それをどのような見方、切り口で表すかということによって、新しく感じたり、古く見えたりするのです。
ぬりえも明治の昔からあるものです。今の「大人のぬりえ」の人気は、従来の見方を変えたから、新鮮で話題になっているのではないでしょうか。
これからも、ぬりえをいつも新鮮にみられるような見方、切り口を提案できるように、考え続けていきたいと思います。

投稿者:Nurie |投稿日:06/07/17 (月)

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