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7月の美術館便り アイコンタクトとが大事

今年の初夏は雨が多く、日照不足でした。7月もまだ雨や曇りの日が多いようですので、健康管理に注意してすごしていきましょう。
ワールドカップは、日本が負けてしまって残念でした。それでも、「ウワ~!すごいプレー」と唸ってしまうような世界のレベルの高い試合をみると本当に感動してしまいます。スポーツや芸術は、言葉がわからなくても、人のこころに直球で訴えることができますから、素晴らしいですね。さて、どの国が世界のナンバーワンになるでしょうか?
  
6月号の美術館便りで、アイコンタクトのお話をしました。きいちのぬりえの少女の目とのアイコンタクトのことです。
● ぬりえの少女の目とのアイコンタクトが大事。
昭和20年~30年代にきいちのぬりえを塗った世代は、あの頃世の中が貧しく、物も豊富になかったので、絵の中の素敵なドレスや着物、上流の生活に憧れて、夢のような世界に自分を投影してぬりえをしてきたと思っていました。その憧れのドレスや着物の裏に、実は、ぬりえの少女との、「アイコンタクト」の秘密が隠されていたのです

ぬりえの少女の目は、私(塗る人)を見ているのです。この少女と私たちぬっている少女たちは、知らずに「アイコンタクト」をしているのです。洋服を塗っているとき、背景を塗っているとき、いつしか少女の目とアイコンタクトをしながら、その少女と会話をしたり、そこまでいかなくても、少女の目や顔から意識がはなれれいることはありません。アイコンタクトがあるいことにより、私たちは、少女に受け入れられている感じをもつことができ、心が安心するようになります。

そして、このことが既に研究をされていることもお伝えしました。
茂木健一郎先生の「脳の中の人生」)中公新書ラクレ)の中でそれが書かれていました。
●「魅力的な女性の顔の写真に対して、脳がどのように反応するかと調べた実験がある。興味深いことに、目と目が合うこと、すなわちアイコンタクトが、脳の活動に影響を与える最も重要な要素であることがわかった。fMRI(機能的磁気共鳴影像法)を持ちいた研究により、女性がこちらを見ている写真に対してだけ、脳の中の「報酬」を表す部分が活動することが明らかになったのである。
「報酬」とは、脳内において、生きる上で必要な水や食べ物、他者とのかかわりなどを、好ましいこととして認識するメカニズムである。魅力的な人と目が合うことが、脳にとっては大切な報酬になるらしい。
日常生活の中でも、魅力的な人と目が合うとドキン!とする。その一方で、自分が一生懸命みつめているのに、向こうが見てくれないとジリジリする。実際、脳の報酬を表す部分の活動は、アイコンタクトが成立していないときには、写真の顔が魅力的であればあるほど、低下する。この活動の低下が、「こっちを見てくれない」というジリジリした気持ちと関係しているらしいと考えられる。」とお伝えしました。

●ドーパミンとは
この報酬というのは、別の言葉でいうと「うれしいこと」だそうで、その報酬を表す物質が「ドーパミン」というものです。ドーパミンという言葉を聞いたことがありませんか?
ドーパミンは、上述のようなドキドキするようなアイコンタクト、「やった~!」というような成功体験、「ああ、そうか!」とひらめいたりするとき、人間はとっても嬉しいものです。そのようなときに脳の中では、ドーパミンが放出されるのだそうです。ドーパミンがでてくると、とても心地よい状態になるそうで、その報酬をだすことになった行動を強化するようになるのだそうです。 たしかに成功したときには、気持ちが高揚しますね。
 ぬりえの中で、少女たちとアイコンタクトを知らず、知らずのうちにしていて、心地よくなっていた。だから、毎日、毎日飽きもせず、ぬりえを塗っていたのです。

●回想療法
さらに、茂木先生の脳のお話によれば、【昔のことを思い出す】ことも脳の活性化に良いということです。
ぬりえ美術館に来ますと、館内に入ったとたんに、子供時代に一気にタイムスリップして、昔の時代に戻ってしまう方がほとんどです。ぬりえをしていた頃の自分の両親の顔、兄弟や友人の顔が浮かんでくるようです。その時に流行していた物や事柄など次から次への話がでてきます。 昔を思い出すキッカケがこの美術館にはいくつもあるのです。
  
回想療法で、昔のことを思い出したら、つい最近起こったことを一緒に思い出すとさらに脳を活性化することができるそうです。昔と今を交互に思い出すのです。
「一昨日の昼は何を食べたかな?」というようなことで、いいのです。すぐに思い出せなくてもよいそうで、大事なことは、思い出そうとすること。出そうででないあのいらいらした気持ちも大事なことなのだそうです。
逆にいけないのは、「思い出せないヮ」と簡単に思い出そうとすることをやめてしまうことだそうです。
ぬりえ美術館に遊びにきて、見学をして、ぬりえをぬる、そして、昔の感慨にふけって、昨日は何をしていたかしらと思い出してみる。これだけで、楽しく脳を活性化することができます。ぜひ、ぜひ、皆様、遊びにいらしてくださいませ。

●最近の大人のぬりえの傾向
さて、日本では、急に大人のぬりえが人気になりました。最近(6月末)の情報では、48社の出版社が、大人向けのぬりえを出版しているそうです。この人気を受けて、出版社以外の会社が「大人のぬりえのぬりえ本」を発行するということも始まっています。
内容的には、作家物が増えてきています。作家であれば、大勢の作家の方や題材が考えられますので、ますます新しいぬりえがでてきて、多くの人に楽しんでもらえるのではないかと思いますので、期待しているところです。
 
このような難しいことを考えなくても、「ぬりえ」の本質は、楽しさです。楽しんでいただければ、 それが一番、脳にもこころにもよいことだと思います。 (館)             

投稿者:Nurie |投稿日:06/07/03 (月)

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