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6月の美術館便り ぬりえと脳

梅雨の時期がやってきました。ぬりえ美術館の金子でございます。雨に負けずに、雨の日の小物を明るい色にしてみたり、雨を使って網戸を洗うなど、雨の日を楽しんでみてはいかがでしょうか? 美術館へのお出かけは、足元に気をつけていらしてくださいませ。
  
このところ「大人のぬりえ」が人気ですね。ぬりえ美術館への取材テーマも「大人のぬりえ」が殆どですので、人気の程を肌で実感しています。
今年の4月に、私もぬりをしているときに「脳」がどうなるのかを測定していただきました。

その結果は、
1.結果として、頭部全体に血流が活発になっている。特に前頭葉右側の血流の活発化が大きいということは、脳が活性化したことを示している、という結果が得られました。
その結果、痴呆やうつなどに予防効果があると考えられることが分かりました。
 
その他にも、ぬりえを塗るといろいろな良い点が分かってきました。

2.ぬりえの前後の心理テストの項目の数値が下がったが、これは、「のんびり、楽になる、俗世を忘れる」という効果が見られると推測される。
ぬりえをした後に、気分が楽になり、自由な気分になるのを感じていたのですが、それが測定結果にも表れました。

「色」についても、重要なことがわかりました。
3.ぬりえは、色を塗ることに意味がある。色を塗ることにも反応しているようなのです。
それは、人間の目からの入力には、"対象物の形質"と"色"を感じる部分とあるのだそうですが、その中でも色は、脳の感情、情動、心を司る部分に入力される(直接関与する)のだ
そうです。色が心を揺さぶるのはそのためなのです。輪郭や形は感情にたいして影響が小さいそうです。

さらに、「きいちのぬりえ」の場合のような人物を塗るとき、こんなことが言えます。
4.塗る素材に「顔」があることも重要な意味を持っているのです。
私たち、昭和20年~30年代にきいちのぬりえを塗って人たちは、あの頃は貧しかったので、素敵な服や着物、アクセサリーなどを塗ることが憧れであり、楽しかったと思っていました。ところが、どんなに素敵なドレスや着物でも、あのきいちの少女の顔がなかったなら、ドレスや着物の素敵さが半減してしまうのです。
なぜなら、人間は形状認識の中で、顔を認識することは特別なのだそうです。それは、人は、ある人を認識するのに、顔をもって認識、区別するからです。服でもって、その人が誰それとは認識をできるものではないのです。
ですから、顔があるとないとでは大きな違いがあるようなのです。服ばかりが大事だったわけではなかったのです。

5.さらに、私の私見ですが、少女と目が大事だと思います。
きいちの少女の目が私を見ているのです。この少女との「アイコンタクト」が大変重要だと思います。
洋服を塗っているとき、背景を塗っているとき、少女の目とアイコンタクトをして、その少女と会話をしたり、そこまでいかなくても、少女の目や顔から意識がはなれれいることはありません。アイコンタクトがあるいことにより、私たちは少女に受け入れられている感じをもつことができ、心が安心するようになります。

ところで、熟年離婚の最大理由のNO.1は、「私の言うことを聞いてくれなかった」ということだそうです。新聞や、テレビを見ながら返事をしても、駄目なのです。しっかり奥様の目を見ながら、返事をしないかぎり、「言うことを聞いてくれた」にはならないのです。
ですから、アイコンタクトはとても重要です。

私の私見と思っていたことが、何と、既に研究をされていました。茂木健一郎先生の「脳の中の人生」)中公新書ラクレ)の中でそれが書かれていました。
「魅力的な女性の顔の写真に対して、脳がどのように反応するかと調べた実験がある。興味深いことに、目と目が合うこと、すなわちアイコンタクトが、脳の活動に影響を与える最も重要な要素であることがわかった。fMRI(機能的磁気共鳴影像法)を持ちいた研究により、女性がこちらを見ている写真に対してだけ、脳の中の「報酬」を表す部分が活動することが明らかになったのである。
「報酬」とは、脳内において、生きる上で必要な水や食べ物、他者とのかかわりなどを、好ましいこととして認識するメカニズムである。魅力的な人と目が合うことが、脳にとっては大切な報酬になるらしい。
日常生活の中でも、魅力的な人と目が合うとドキン!とする。その一方で、自分が一生懸命みつめているのに、向こうが見てくれないとジリジリする。実際、脳の報酬を表す部分の活動は、アイコンタクトが成立していないときには、写真の顔が魅力的であればあるほど、定価することも見いだされた。この活動の低下が、「こっちを見てくれない」というジリジリした気持ちと関係しているらしいと考えられる。」
ぬりえは、実は、アイコンタクトが人気の秘密だったのですね。

ぬりえと脳の関係のまとめ
1.単純作業でリズムの持続する反復運動が集中に関係する。
2.顔。特に少女。自分を投影し、現実ではない、少女のイメージの世界を想像する(イメージの世界に入る)例えば、飛行機のぬりえでは、この世界に入り込めないのではないでしょうか。
3.色を塗ることが心に影響する。

様々なことが分かってきました。ぜひ、雨の日の一日、机に座ってぬりえをしてみては
いかがでしょうか?お好きな絵を見つけて、チャレンジをしていただきたいと思っております。

投稿者:Nurie |投稿日:06/06/23 (金)

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